検証してみて分かった「長期投資のメリットとデメリット」
「とある本に掲載されている手法を再現してみよう!」というコンセプトで、「16年間、16銘柄」のバックテストを行ってきました。
全部で6つあった手法のうち、実に4つが長期の手法。しかも、「超・長期」と言っても過言ではないような手法でした。これまで長期の手法の検証をしたことがなかったボクにとって、非常に勉強になるものでした。
この記事では、今回の一連のバックテストで分かった「長期投資のメリットとデメリット」について書きたいと思います。
参考にしたバックテスト
まずは「伝説のトレーダー集団 タートル流 投資の魔術」に掲載されているバックテストをご紹介。
市場
豪ドル、英ポンド、とうもろこし、ココア、カナダドル、原油、綿、ユーロ、ユーロダラー、飼養牛、金、銅、灯油、無鉛ガソリン、日本円、コーヒー、牛、豚、メキシコペソ、天然ガス、大豆、砂糖、スイスフラン、銀、財務省中期債権、同長期債権、小麦。
流動性の高いアメリカ市場から選んだそう。27銘柄。
資金管理
「資金アルゴリズムはタートルズが使用したものと同じ」と表記されている。攻撃性を半分にした数値を用いて、1−ATRを取引資本の1%とするかわりに0.5%としている。
テストの日程
1996年1月から2006年6月まで。
検証の結果
システム | CAGR(%) | MARレシオ | 取引数 | 勝率(%) | 最大DD(%) | DD期間(月) |
ATR CBO | 49.5 | 1.24 | 206 | 42.2 | 39.9 | 8.3 |
ボリンジャーCBO | 51.8 | 1.52 | 130 | 54.6 | 34.1 | 7.8 |
ドンチャン・トレンド | 29.4 | 0.80 | 1,832 | 39.7 | 36.7 | 27.6 |
時限付ドンチャン | 57.2 | 1.31 | 746 | 58.3 | 43.6 | 12.1 |
ダブル移動平均 | 57.8 | 1.82 | 210 | 39.5 | 31.8 | 8.3 |
トリプル移動平均 | 48.1 | 1.53 | 181 | 42.5 | 31.3 | 8.5 |
※CBO:チャネルブレイクアウト
CAGRは、簡単に説明するなら「平均の年利」です。「統計的に毎年●●%儲かる手法」みたいなイメージですね。
MARレシオは、最大ドローダウンに対するCAGRを表しています。つまり「CAGR/最大ドローダウン」ですね。ファンドの成績を比較するのによく使われるそうです。
どこまで再現できたのか
掲載されていた上記の手法を再現していったわけですが、「どこまで再現できたのか」は前回の記事をご覧ください。
「長期投資」って思っていたよりも良い
これは、あくまでも私の印象です。もちろん、メリット・デメリットありますが、『「長期投資」って思っていたよりも良いな』というのが、正直な感想です。
「長期投資」って思っていたよりも良いです。ほんと、びっくりしました。
これまで、たくさんの検証をしてきましたが、正直、長期の検証を行ったことはありませんでした。
しかも、今回の「長期の手法」は、16年間、16銘柄の検証にも関わらず、取引回数が100~200くらいの「超・長期の手法」です。これまで、想像したこともないくらい長期なのです。(本を読んではいたのですが、そこまで気に留めていませんでした)
ダブル移動平均のポジション保有期間
~10日 | ~1ヶ月 | ~3ヶ月 | ~半年 | ~1年 | ~2年 | ~3年 | 3年以上 |
2 | 3 | 10 | 7 | 12 | 12 | 9 | 24 |
これは、あるダブル移動平均(350EMAと100EMA)の検証結果より、取引数を保有期間で分けたものです。1ヶ月の営業日を22日として集計しています。
なんと、保有期間が3年以上のポジションがもっとも多いのです。
「超・長期」ですよね!!
こんなに長期なのに、短期の手法と遜色ない結果が出たわけです(結果の詳細はこちらの記事)。そして、『「超・長期」ならではのメリットがいくつかあるな』と感じたのです。
長期投資のメリット
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今、ざっと挙げたので、精査したらもっとあるかもしれません。それでも、これだけ良い点があります。ひとつずつ解説してみましょう。
1.手が掛からない
16年間で16銘柄をウォッチしていても、取引回数は100~200回です。これは、ピラミッティングも含めた数です。当然、監視は必要ですが、1日に何回も何回も取引する必要がない。これは大きなメリットであろうと思います。(その分大きなリスクやデメリットもあります。後述の内容もお読みください)
2.コストが掛からない
これは、手数料の話ですね。取引数が少ないということは、その分、手数料が安くなるということです。
3.分散投資の効果が出やすい
これは、私の感覚的なものです。確証や、数字での裏付けはありません。が、長期の手法は、相関等をしっかり考慮した上であれば、ちょっと安定しているんじゃないかな~という印象です。あくまでも印象で、感覚ですので、まったく保証できる話ではありませんが。
4.「手法の分散」の選択肢として有力
分散投資というのは、何も銘柄を分散するだけではありません。手法で分散するという選択肢もあります。例えば、「トレンドフォローとカウンタートレード」「短期と長期」といった手法を同時に動かして、手法の分散をしても良いのです。そういった意味で、特徴的な「超・長期の手法」は、有力であると思います。
5.課税の機会が少ない
あくまでも機会が少ないというお話です。
3年以上保有するポジションが多いと書きましたが、利益のポジションであるほど長期のポジションになる傾向が強いです。損失のポジションは早めの決済になる傾向があります。つまり、利確されるまでが長いのです。
利確されなければ「未決済の純資産」で、決済されてはじめて収益として確定されるわけです。確定されていなければ課税されません。
長期投資のデメリット
さて、当然ですがデメリットもあります。このデメリットを良しとするかどうか。大事です。
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デメリットもひとつずつ解説してみます。
1.精神的に(かなり)キツイ
(多分)かなりキツイです。
「エントリーしてから決済まで、ず~~~~っと損」なんていうポジションもあるわけです。しかも、その期間が長い長い。でも、このシステムでトレードするのなら、途中決済はご法度です。1年、2年、3年――、損が続くわけです。それを黙って眺めているのは、想像以上にキツイと思います。それに耐えなければなりません。
2.現金化の機会が少ない
これは、次の記事で詳しく掘り下げようと思いますが、長期投資は、決済の機会が少ないです。つまり、「利益が出ているけど、あくまでも未決済の純資産であって確定されていない」という状況が多くなります。
3.利益を活用できる機会が少ない
投資をするなら複利を活用しなければもったいないですね。複利で運用するということは、どこかのタイミングで利益を運用資金に含めて、ポジションの量を算出して、次のエントリーを行うわけです。
しかし、決済の回数が少ないということは、「利益を運用資金に含める」「ポジションの量を再計算する」という機会が少ないということになるのです。これは、運用期間が長ければ長いほど、最終損益に悪影響を及ぼします。
4.検証のサンプル数が少なくなりがち
ボクが過去に行った『サイコロでの「大数の法則」の実験』は、回数が1000回を超えたあたりから結果が安定します。つまり、16年間で16銘柄という検証であっても、100~200という取引回数の検証ではサンプル数としては足りないかもしれません。
5.手法の良し悪しの判断が遅れがち
「取引回数が少ない」「ポジションの保有期間が長い」ということは、実戦に導入したあと手法の良し悪しの判断まで相当の期間が必要です。リカバリーが難しいというリスクがあります。
総括
どんな手法にもメリットとデメリットがあります。長期投資には大きなメリットがありますが、対するデメリットもなかなかのものです。
今回、6つの手法を検証してみて感じたメリットとデメリットをまとめましたが、個人的にはかなり良い収穫だったと思っています。
次回は、長期投資の特徴を、もう少し掘り下げてまとめてみようと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます^^!