寺子屋チャートコラム 禅之十三 RSI篇

小次郎講師
RSIの教えも2回目です。
さて、瞬くん。前回課した“お年玉”はどうですか??
瞬くん
(お年玉を”課す”なんて日本語聞いたことないぞ…)
RSIで「買われ過ぎだから売りサイン」「売られ過ぎだから買いサイン」と一概にならない理由について、ですよね?
小次郎講師
そうです。
おさらいしておくと、RSIとは過去N日間(通常は14日)の全体の値動きの中で、上昇分がどれくらいだったかの割合を示す指標でした。
そしてその数値が70%以上になったら買われ過ぎ30%以下になったら売られ過ぎということを一般的には示すと。
瞬くん
だからと言って、安易にそれが売買サインにはならない…と。
うーん…何度考えてみても、上昇分が相対的に大きくなって加熱して買われ過ぎを示したら、その後クールダウンする売りが出てきそうな気がするんですよね。
だから売っていいんじゃないかと…
小次郎講師
でも前回も最後に載せたチャートで、それを売買サインとした時にボロ負けするシミュレーションお見せしましたよね!?
瞬くん
や、もうなんとなくっす!直感っす!!
小次郎講師
なんとなくってコラ!
考えることを諦めない。放棄しない。
確かにトレードにおいては直感も大事ですが、テクニカル指標というものはフワフワしたものではなく、確固たるロジックが必ずあるのです。
瞬くん
感覚でなんとなく生きてきた僕にとっては辛過ぎますヨ…うぅ
小次郎講師
ほらほら、すぐに諦めない。
いいですか、まずはRSIの本質をもう一度考えてみましょう。
前回も学びましたが、RSIの数値が大きくなる・小さくなるというのは、
どういったことを示していますか?

RSIのシグナルの理由

瞬くん
RSIの数値がちょうど50%の時が売りと買いが均衡している状態ですから、
50%以上の時は買いが優勢。50%以下の時は売りが優勢。
そしてそれが100%に近づけば近づくほど買い勢力が優っていて
0%に近づけば近づくほど売り勢力が優っているということでしたね。
小次郎講師
そこまで分かっていればもう少しですよ!
瞬くん
え!?
小次郎講師
では逆から考えてみて、
仮にRSIが高くなってる時は、価格がどんな値動きになってると思います??
瞬くん
そうっすね…。
えー、RSIが高いということは買い勢力が強い、つまり過去14日間の中で上昇幅の方が大きいということだから、値動きで言うと上昇トレンドが発生してる可能性が高そうですね。
小次郎講師
そうです!
それは確かに「買われ過ぎ」だとしても、
じゃあ、その上昇トレンド発生中に「売り」を仕掛けようと瞬くんは思いますか??
瞬くん
あ。
あぁっ……!!!
小次郎講師
ようやく分かったようですね。
瞬くん
そうか!例え“買われ過ぎ”だとしても、イコールそこから売り優勢の下降トレンドが発生するわけではないんだ!だって上昇トレンドが発生してるわけだから!
買いが優勢な中で売りを仕掛けるなんて、トレンドフォロー型としてはできない!
小次郎講師
そう考えると前回最後に見た「ドンキホーテホールディングス」のこのチャートも違って見えてきますね。

小次郎講師
強い上昇トレンドが発生してる後半がことごとく失敗したのは、
トレンドが加速してる時はそれだけ相対的に上昇の割合が大きいわけですから
70%以上をつける時はいくらでもあるからなんですよ。
瞬くん
確かに計算式を理解してるとその通りっすよね。
てことは、下降トレンドが加速してる時は30%以下が頻発すると。
小次郎講師
必ず、というわけではありませんが、
そうなることは多いです。
そこで私は”買われ過ぎ=売りサイン”、”売られ過ぎ=買いサイン”と
機械的に考えるのではなく、

小次郎講師
こう考えるようにしています。
瞬くん
今まで誤解してました…
“そこで売りで入れ!”ということではなく
あくまで「一時的な売りが出てくるかもしれないから注意が必要ですよ!」というサインなんですね。
小次郎講師
そうなんです。
「上昇の中の押し目の売り」や「下降の中の戻りの買い」などの
利益確定ものが出てくるかも!というサインなんです。
そこを誤らないで使えると、RSIは有効な事前注意信号をくれる
とても有益なテクニカル指標となってくるのです。

70超え30割れの「時期」にも注意

小次郎講師
上記のことからRSIが70を超えたり30を下回ったりしても
新規の売りや買いを仕掛けるサインとは言えませんが、
買われ過ぎ・売られ過ぎ信号であることには変わりありません。
瞬くん
調整の売りや買いが出てくる可能性があるってことですもんね。
小次郎講師
だからそれがもしトレンド中だったら、時期としていつ出てきたかに注目して欲しいんです。
瞬くん
時期ですか??
小次郎講師
トレンドが発生したら、大体3段階に分けて上がる、3段階に分けて下がるというパターンが多く見られます。
瞬くん
上がるにしろ下がるにしろ、一直線ではないですもんね。すごく上がって、ちょっと下がって、またすごい上がる、みたいな。
小次郎講師
だから利益確定の売りや買いが、トレンドの序盤だったらまたその後再び元の流れに戻るかもしれませんが、トレンドの終盤だったらその利益確定のままトレンドが反転してしまうことも十分にあり得るんです。
瞬くん
うーん、ちょっとイメージしづらいですね。
小次郎講師
そう言うと思ってチャートを持ってきました。
下降のパターンで見てみましょう。

瞬くん
ホントだ!その後大きな陽線で流れが変わっちゃってる…!
これは4段ですが終盤にこの”買われ過ぎ””売られ過ぎ”が出てきたら
要警戒ってことですね!!
小次郎講師
トレンドの終盤だったらそこが天井や底となることもあり得る
と正しく認識することが肝要。
つまりRSIを正しく使うためにはトレンドの序盤なのか、中盤なのか、
終盤なのかということも考えてみてください

RSIの極値

瞬くん
時期を考えず短絡的にRSIが70超えたら売ろう、30割れたら買おう
としちゃいけないことは分かりましたが、
100とか0だったら流石にそれ以上はないわけだから逆張りのサインとしてもいいんじゃないんですか!?
小次郎講師
瞬くんはまだRSIの理解が足りなかったみたいですね…残念。
師である私の責任でしょうか…
瞬くん
えぇっ!?そんな自責の念に駆られちゃうレベル?
小次郎講師
いいですか。
RSIが100や0をつける場合を考えてみてください。
計算式を理解していれば容易いはずです。
瞬くん
えーと、100ということは全体の中で上昇分と値動き幅が同じだったわけだから、
1/1×100で100。
小次郎講師
つまり?
瞬くん
つまり…?
あ!14日間全部上昇だったってことか!!
小次郎講師
では逆に0は?
瞬くん
上昇分が1日もなかった時、つまり14日連続で価格が下落した場合だ!
小次郎講師
理論的にはそういうことなんです。あり得なくはない。
ただ、昨年日経平均が16日連続で上昇、なんてこともありましたが、
それがニュースになるくらいですから滅多にないことなんです。
逆もまた然り。
瞬くん
実際の相場でそんなチャートほとんど見かけませんもんね…。
小次郎講師
だから、RSIは0や100まで行くこと、もしくはその近辺まで行くこともほとんどない指標なんです。
瞬くん
じゃあ、あり得る範囲ですと、上昇トレンドや下降トレンド中は
どのくらいの数値になることが多いんですか??
小次郎講師
市場では買方と売方が毎日戦っています。
例えば1日上がれば翌日は下がり、1日下がれば翌日は上がるというのが
売方と買方の均衡が取れている状態。
そしてそこから買い方が優勢になったとしても、
一方的に毎日上昇ということはほとんどなく、
安定的な上昇相場だと2日上がって1日下がるというのが標準。
瞬くん
2歩進んで1歩下がる、的な。
小次郎講師
そう、その変動幅が仮に一定だったとすると全体の値動きの2/3上がってるわけですから、RSIは66.6%となります。
瞬くん
それが安定上昇してる時の数値かぁ。
小次郎講師
反対に安定した下降トレンドだったら2日下がって1日上がるわけですから33.3%となりますね。

瞬くん
こう考えると、RSIが70を超えたり30を下回る時は
標準より買われ過ぎている・売られ過ぎているという認識も納得っす。

トレンドがある時のRSIの使い方

瞬くん
トレンド中は勢いがあるわけだから、RSIが70を超えたり30を下回ったりするというのは、わかりましたが、もみ合い相場ではどうなんですか?
もみ合い相場だったら、どちらかに行き過ぎたら戻ってきそうな気がして、
70超えや30割れをうまく使えそうな気もするんですけど…
小次郎講師
もみ合いのパターンにまで気が回るとは!
瞬くん
えへへ。
小次郎講師
でも残念ながら下のチャートを見てもらうとわかるように
もみあい相場中に70以上、30以下を付けることは滅多にないんです。
価格変動が均衡して横ばいになってるわけですからね。

もみ合い

瞬くん
とすると、この70以上は買われ過ぎ、30以下は売られ過ぎということだけじゃやっぱり有効活用出来ないなぁ…。
小次郎講師
それは“使い方次第”。
近年、コンスタンス・ブラウンさんというプロフェッショナルトレーダーが、
こう見抜きました。「もみ合い相場はRSIが30から70の間で行き来する」と。
瞬くん
上の図を見るとそんな感じしてきますね。
小次郎講師
そして上昇トレンド時は40〜90で推移し、下降トレンドは10〜60で推移すると。
瞬くん
標準がそれぞれ66.6%と33.3%と考えると、合点のいく数値です!
小次郎講師
さらに、上昇トレンド時にはRSIの40〜50が押し目の支持帯となりやすく、
下降トレンドの時には50〜60が戻りの抵抗帯となりやすいとも発見しました。
瞬くん
へぇ〜!そうなんですか!
図にまとめるとこんな感じっすね。

小次郎講師
チャートで見てみましょう。

上昇トレンド

下降トレンド

瞬くん

上昇トレンドなら50を割ったところが上昇トレンド中の押し目を示し、
下降トレンドなら50を超えたところが戻りを示す感じですね。
…!
てことはそこでまた買ったり売ったりすればいいんですね!?

小次郎講師
そこも慎重に慎重に。
機械的にやってるだけではダメですよ。
「相場は生き物」なんですから。
瞬くん
(名言出た!)
小次郎講師
上昇トレンド中にRSIが40〜50に突入したら押し目を疑い、
そのゾーンの中から再度上昇を始めたら「あ、まだ継続なんだな」と思って買いを仕掛けてみる。下降はその逆で50〜60に突入して再び下がってきたら売り。
瞬くん
やっぱり、帯に跳ね返されるってところが大事なんですね。
仕掛けるなら勢いがまだあるのを確認してから、と。
短絡的に考えたらダメなんだなぁRSIは。
小次郎講師
RSIに限らず相場は全てそうです。
その時々で既存のルールが上手くいかないこともあるので、
テクニカル指標をどう使うかをガチガチに決めて臨むのではなく、
臨機応変に市場に合わせられる柔軟さも大事なんですよ。
瞬くん
RSIも使いよう!!
いやぁ今日もまた一つ成長してしまいました。ありがとうございます!
まさに知識のお年玉でした!!
小次郎講師
(ふぅ。Noお年玉作戦が上手くいってよかった…)
瞬くん
どうしました?
小次郎講師
いえいえ。
それじゃついでに、街まで買い出しに行ってもらえますか??
お寺の食料とか日用品が年末年始で足りなくなってきてしまって…
瞬くん
えぇっ!?こんな時間からですか??
山越えたら数時間かかりますよ!
小次郎講師
いやぁ、これも良質な筋肉をつける「肉体のお年玉」ってことで…
瞬くん
あ、割と筋肉はある方なんで結構っす。
ムキッ!!

おしまい

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