投資家にとっても重要な損益の一区切りとなる
年の終わりの節目「年末」がいよいよ目の前と迫ってきました。
年末のこの時期に、とりあえず投資の利益を確定したくなる方も多いかと思います。
含み益をひとまず確定させて、新たな気持ちで新年を迎えよう、と。
ただ、それが仮想通貨の取引である方は
「ちょっと待ってください!」。
まだまだ充分に黎明期の仮想通貨は、法整備・税制上の取り扱いも同じく創成期なので、
仕組みをわからず、ただ儲かったからと言って利益を受け取るだけだと、
最悪逮捕されることにもなりかねない!?
今年たくさん発生したでありましょう「仮想通貨長者」の方にこそ
このコラムを送りたいと思いますので、
利益を確定し豪遊するのは本記事を御覧になってからでも
宜しいのではないでしょうか??
ということで、今回は【仮想通貨の納税】を特別に取り扱ってみました。
仮想通貨、その税金発生の仕組み。
仮想通貨で一番有名なものと言えば、やはり「ビットコイン」。
テレビCMもやっていますし名前くらいは投資に興味がなくても聞いたことがあるという方がほとんどかと思われます。
ですが認知度は高くともその“システム”が世間的に認知されているのかと言えば
決してそうではなく、個人投資家の中にでさえ
未だにビットコインのあの有名なデザインの貨幣が存在すると思ってる方も多いほど…!
国としても、絵空事としてもう無視することのできないところまで来ており
法律上での簡単な定義付けがなされたことは記憶に新しいですが、
仮想通貨に関する税法はまだまだ整備されていない分野なのです。
ビットコインの急騰はチャートを見れば火を見るより明らかで、
今年の初め、1BTC(ビットコイン)あたり日本円で約11万円だったものが、
一年後の年末の2017年12/30現在約170万円で取引されています。
バブルと言えばバブルな状況ですが、
投資商品としてもそれだけ純粋に価値が上がってるというのは厳然たる事実。
例えば上記のビットコインを年始の11万円の時に現物で30BTC買っていたとすると、
今現在では総額5100万円になっているといういことになります。(細かい手数料や売り買いのスプレッドは除いて)
元手の330万円を差し引いても4770万円の利益。
ただし
やったー!と喜び勇んでそれを使おうとするのはオススメできません。
なぜなら、仮想通貨の利益は現行の税法上「総合課税」にあたるからです!
まず投資における税金システムを理解するために
是非こちらのページも併せてご覧ください。
インベスター俳優「瞬」の劇的!初心者講座 【税金のお話 初級編】
インベスター俳優「瞬」の劇的!初心者講座 【税金のお話 上級編】
そしてそちらの記事にも書いてありますように、
「総合課税」というものは、他の所得と合算して税金がかけられてしまう、かつ
超過累進課税といって所得の額が多ければ多いほど、税金の割合も多くなってしまうシステムなんです!
4000万円以上だと最大45%にも税率がなるので、
仮に上記のパターンで儲けて、さらに会社のお給料が年で500万あるとしたら、
1年の所得が5270万円あることになり
その場合の所得税額は
控除分(この場合4000万円超なので479万6000円)を除いても
5270万×45%-4796000
=23715000-4796000
=1891万9000円にもなり、
それを利益から引くと手元に残るのは
一気に3378万1000円にまで減ります。
さらに仮想通貨の利益では10%分の住民税も翌年の5月頃に払うことになるので
3378万1000円-5270万×10%
=2851万1000円
5000万以上あった利益がこれですよ…!
半分くらい税金で持っていかれてます。
(同じ枠組みで計上される会社で働いて得た500万分など、とうに税金で露と消えてしまっています。)
それを知った上でも、あなたは利益確定を急ぎますか…??
これは現物だけでなく、最近増えてきた仮想通貨FXでも同様で、
FXという名前がついているからと言って申告分離課税にはならないのでご用心。
仮想通貨の所得区分
さて、
現在のところ
主に売買差益で利益を出した場合は「雑所得」、
人からもらったり、給与自体がビットコインだったりすると「譲渡所得」にあたるそうな。
利益になるケースの大半が税制の中でも厳しめの「雑所得」に分類されたことで、
嘆息をもらした投資家も多いんだとか。
ちなみに、じゃあいつ仮想通貨での利益が生まれたと判断されるかと言うと、
利益確定をして円や他の仮想通貨に変換した時点
仮想通貨で物を買った時点
が主なものだそうです。
他にもマイニングしてもらったものは、もらった瞬間発生したとみなされるそうです。
(ただビットコインのマイニングはもはや物凄く高度なものになっている為、他の発展途上のアルトコインでの発生が主なものとなるようで)
ハードフォーク(仮想通貨の分裂)において
新たに誕生した仮想通貨を現行持ってる量と同量タダでもらうってことは最近よくあることですが、
その場合は仮想通貨分裂の時点では取引相場が存在しておらず、
価値を持っていないものとして扱われるので、
そのもらった時はまだ利益は発生しないシステムだそうです。
それを売却や使用した時点で所得が発生したとみなされる仕組み。
仮想通貨における利益の申告漏れはどうなるの?
投資のことをよく分からずともビットコインを手にしてしまっている人、結構いると思います。その方が注意しなければならなく、かつ今後ニュースになることが目に見えているのが
「仮想通貨による脱税」。まさにこれ。
ビットコインの利益を確定申告する必要あるの??なんて思っていたら、罪に問われてしまうかもしれませんよ!
上記は罰則の追加分としてプラスして課される税金分です。
脱税してしまう行為そのものの罪の代償としてまず
「5年以下の懲役」または「500万円以下の罰金」(両方併科有り)に処せられてしまいますので、申告は当たり前ですが必ずきっちり行うようにしましょう。
申告の有無
仮想通貨の確定申告を行わなければならない条件として、
売買利益の雑所得だと20万円以上、譲渡所得の50万円以上所得がある場合は
確定申告&納税の義務が発生してきます。
他のFXや商品先物での利益も雑所得に含まれるため、
それらと仮想通貨を含めた所得合計額が20万円に達していなければ、
申告しなくても平気=納税しなくても良い、ということになってきます。
(ただし住民税は20万以下でも申告が必要)
ので、たくさん仮想通貨で儲けた人の中には
「毎年20万円だけ現金化する」という方もいるそうで…!
(でもそれだと、たくさん儲かってるのに全然換金できず使用できないジレンマ)
ちなみに異なる取引所における仮想通貨の損益通算は出来るそうですが、
FXや株のように繰り越し控除は出来ませんのでご注意を。
仮想通貨の申告は難易度が高い!?
ここまでお読み頂いて、
「なんだかややこしいわ…」と思った方もいらっしゃるでしょう。
そうなんです。
その通りなんです。
まだ整備の土台も出来てない分野の税制なので、
現行の法律に当てはめるなら…といった場当たり的決定が多いのです…!理解しづらいのもそりゃ道理。
ただ、そんな時代のニーズに応えてか、
最近は仮想通貨の取引所やウォレットの履歴を参考に
損益を自動計算してくれるサービスもネットにはあるので、
そういったものを利用してみるのもいいかもしれません。(ただし利用可能な取引所が限られていたりしますが)
また、国税庁が発行した仮想通貨の所得に関するQ&Aも公開されてますので、
少々分かりづらいですが一読してみると、納税を理解する一助となるかもしれませんね。
国税庁Q&A PDF
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf
仮想通貨の納税問題、今後の展望は?
繰り返しになりますが、この分野はまだまだ十分な話し合いもされておらず、
政府的に認可もそこそこなものに対する税制に過ぎません。
ただし、これからの未来、これからの社会で、無視のできない存在となってくるのは、もう明らかなことだと言って良いでしょう。
日銀の黒田総裁も
「仮想通貨は異常な高騰」
「通貨としての機能ではなく投資や投機の対象として取引されている」
「政策に影響は及ぼさない」
なんて気にしていないそぶりの見解を示していますが、
公式な会見の場でこれだけ仮想通貨に対して言及する時点で、
もう内心気になりまくってますし、
影響をつぶさに感じていると言わざるを得ないでしょう。
(本当に無視できる存在ならこんな発言をそもそもしません)
そういった事柄からも、今後もっとちゃんとした法整備もなされるはずです。
そうなってから利益確定しようかな…と思ってる方、それが現段階では正解かもしれません。
非常に歯がゆいですが。
FXもかつては総合課税でしたが、流行り出した後の2012年に分離課税に法が改正されたことを考えれば、未来に期待もできるのかもしれません。
まだまだ投資商品としては“穴ぽこだらけ”な仮想通貨ですが、
今すぐに利益確定して納税はせずとも
今後の国の対応には、常に目を光らせておくと良いかもしれませんね。
(インベスター俳優「瞬」)