みなさんこんにちはFX女優の野中ななみです。
今までアメリカ・ドイツ・オーストラリアの経済指標に注目してきましたが、今回はいよいよ日本の経済指標に注目したいと思います!
テーマは、あまり知られていない日本の雇用統計についてです!
雇用統計といえばアメリカが連想されますが実際は各国で発表されており、もちろん日本でも毎月発表されています。
日本の雇用統計で注目されるのは『完全失業率』と『有効求人倍率』という2つの項目。
発表は毎月の月末または月初の朝8時30分に行われ、9月分の雇用統計の発表は明朝8時30分に行われます。
この2つの項目を見る上で、日本ならではの考え方による注意点もありますので早速見ていきましょう。
目次
完全失業率とは
まず初めに完全失業率から見ていきましょう。
完全失業率は、15歳以上の働く意欲がある人で仕事を探しても仕事に就くことができなかった人の割合を示します。
なぜ「失業率」ではなく「完全失業率」と表記するかというと、1950年に失業者の定義が変更され、それまでの定義の失業者と新しい定義の失業者を区別できるように、新しい定義の失業者は「完全失業者」と表記された為です。しかし現在は”完全”という言葉の意味は失われているようなのでアメリカの雇用統計等で目にする一般的な失業率と同じ物だと考えて良いようです。
完全失業率は総務省の労働力調査によって調査された完全失業者の数から割り出されます。対象者は毎月無作為に選ばれた4万世帯に住む約10万人。
かなり規模の大きな調査なのですね。
計算式
完全失業率は次のような計算式で求められます。
まず完全失業者数というのは月末1週間と定められている調査期間の間に、『働ける状況にあり、その意思があり、仕事を探していて、仕事があればすぐに働けるけれども一度も仕事をしなかった人の数』を表します。
そして就業者数は、パートタイムやアルバイトで働いている人も含め今現在仕事に就いている人の数を表し、就業者数と完全失業者数を合わせて労働力人口と呼びます。
つまり、完全失業者数を労働力人口で割ることで日本全体の働くことができる人の内、働きたいのに仕事が見つからない人がどれ位いるのかを表した数字なのです。
具体的な数字を入れて計算してみると、
となります。
ただし完全失業者は求職活動をしている事が条件になるので、働く意思がない人や過去に求職活動をした履歴がない人、健康上の問題等で働くことができない人は完全失業者には含まず、非労働力人口に数えます。
非労働力人口とは
満15歳以上の人の内、病気や高齢等の理由で働けない人と就業能力があるにも関わらず働く意思がない人の合計を非労働力人口と呼びます。専業主婦や学生も非労働力人口に含まれます。
先ほどの計算のように就業者数が8万人、完全失業者数が5千人、そして全調査人数が10万人だとすると労働力人口は8万5千人なので10万人から8万5千人を引いた1万5千人が非労働力人口だということになります。
完全失業率は仕事に就きたいのに就けない人の割合を見ている指標なので、働く意思がない・働く必要がない人数を調査した非労働力人口は、完全失業率の計算には含まれません。
9月29日に発表された8月分の雇用統計によると、
就業者数は56か月連続で増加しており、完全失業者数は87か月連続で減少しているそうです。それに加えて完全失業率は約2.795%という低水準。
日本の雇用状態はかなり良いのかと思ったら、ここには注意点が潜んでいました。
景気と完全失業率の関係と注意点
通常、完全失業率は好景気の時に低下し、不景気になると上昇します。
ただし、これには3つの注意点があります。
まず1つ目は日本は終身雇用の考え方が根強く残っている為、簡単に人員削減ができないという点です。
仮に、日本の景気が悪くなって会社の経営状態が悪化し労働者の数を減らしたいと会社側が考えたとします。しかし日本においてリストラというのは会社側にも労働者側にも大きな意味を持つ物なので、特に正社員は会社側が人員削減を避ける傾向にあります。その結果、会社に籍を置いているにも関わらず仕事が無い『会社内失業』状態に陥ります。これは『滞在失業者』とも言われ、失業者でありながらも統計上では就業者に分類されてしまい完全失業率には含まれません。
2つ目は求職活動を諦めてしまうケースです。
冒頭にも書いたように完全失業者の定義の中には『求職活動をしている』という条件があります。しかし、長期間求職活動をしていても仕事に就けず求職活動を諦めてしまうと『働く意思がない人』とみなされ非労働力人口に計上されてしまい、この場合も完全失業率には含まれません。
この2点から、不景気時の完全失業率は実態よりも低すぎるという傾向があります。
5%で完全雇用状態だと言われているアメリカの失業率に比べて先月の日本の完全失業率は約2.795%だという事で日本の雇用状態はアメリカよりも良いように見えますが、この数字の裏側には完全失業率に含まれない、隠れた失業者が多くいるという事なんですね。
3つ目は、完全失業率が景気動向よりも遅れて変動する傾向がある点です。
先ほども書いたように企業は不況時にも人員削減せずに持ち堪えようとする傾向があり、経営状態の悪化が深刻化して初めて希望退職者を募集し始めます。経営状態が回復した際にも、まずは労働時間の延長等で対応し回復が確実になってから雇用の増加を検討し始める為、完全失業率の上昇も低下も実際の景気動向よりもかなり遅れて推移します。
これは日本ならではの特徴だと言えるでしょう。
有効求人倍率とは
続いて、有効求人倍率を見ていきましょう。
有効求人倍率は、公共職業安定所(ハローワーク)に登録している人=「有効求職者」と、求人を募集している企業からの求人数=「有効求人数」との割合を示す経済指標のことをいいます。
これにより、日本全体で人手が不足しているのか足り過ぎているのかが分かります。完全失業率が総務省から発表されるのに対し、有効求人倍率は厚生労働省から発表されます。
計算式
有効求人倍率は次のような計算式で求められます。
具体的な数字を入れて計算してみると、
となります。このように有効求人倍率が1を下回ると仕事不足の状態を、1を上回ると求職者以上の求人ニーズがあることを表します。
9月29日に発表された8月の調査結果で計算してみると、
有効求人数:2,660,853件、有効求職者数:1,767,273人
有効求人倍率=2,660,853÷1,767,273=約1.51倍
ということで現在は求職者以上の求人ニーズがある状態のようです。
有効求人倍率は申し込みから通常2ヶ月間という”有効”期限が定められているため、「有効求人倍率」と表記します。つまり、公表する月に新たに登録した人とその前月に登録した人のみが”有効”求人倍率に含まれています。
この指標はハローワークを通じた求人・求職情報を利用するため、求人情報誌や転職情報サイトを経由した求人・求職は含まれていないという点が注意点に挙げられます。
完全失業率・有効求人倍率の推移
こちらは完全失業率と有効求人倍率の年平均の推移を表したグラフです。
リーマンショックが起きた平成20年以降を見ると完全失業率は平成21年・22年、有効求人倍率は平成21年が最も悪く、現在は回復傾向にあります。
リーマンショックが起きたのは平成20年9月15日。ということは平成20年の年平均の内、約4ヶ月間はリーマンショック後の数値が入っているのにも関わらず完全失業率と有効求人倍率の両方とも前年の平成19年の値から大きく変化していません。
この推移の仕方に、世紀の大不況の波が押し寄せてもすぐには労働力削減をしない日本人の国民性を感じます。
発表後のチャート
経済指標の発表は事前予想と結果のギャップが重要視されますが、直近3ヶ月間の日本の雇用統計はほぼ事前予想通りの結果が出ていることが分かりました。
雇用統計の結果と共に米ドル円のチャートを見てみましょう。
◆7月28日発表
◆8月29日発表
◆9月29日発表
このように事前予想と結果が概ね一致している為大きな価格変動はないようです。
完全失業率と有効求人倍率の平成28年からの推移を見ても結果が大きく変動していない事が分かりますね。
事前予想とかけ離れた結果が出ないという事は日本経済が安定しているという事にも繋がるので悪い事ではないと思いますがここまで変化がないとは驚きでした。
ただ、有効求人倍率はハローワークに登録している人が対象の調査なので、現在主流になっているアルバイト情報誌やスマートフォンを使っての求職活動が含まれていない事が変動の少なさに関係しているかもしれません。
こうして見ると、為替の価格変動に大きく関わっているアメリカの雇用統計と比べると日本の雇用統計は注目度が低いという事がよく分かりますね!
日本人の私としては悔しいです。日本の雇用統計が世界経済に大きな影響を与えるほどの大国になってほしいですね。
今後の注目経済指標
◆10月31日
日本 完全失業率・有効求人倍率、日銀政策決定会合
アメリカ CB消費者信頼感指数
◆11月1日
アメリカ ADP雇用統計、FOMC政策金利発表
◆11月2日
イギリス BOE政策金利発表
◆11月3日
アメリカ 雇用統計
日本の雇用統計はアメリカに比べると注目度は低いですが、日本の景気を表す大事な指標として今後も注目していきたいと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
野中ななみ