知らぬ間に強制ロスカットも!? 〜くりっく株365の制度変更に要警戒〜

小次郎講師の弟子、インベスター俳優の廣瀬瞬です。

昨今の好調な世界の株価を反映してか、
より人気の高まりつつある投資商品「くりっく株365」

日本の指数である「日経225」のみならず、手軽に海外の株価指数であるアメリカの「NYダウ」やドイツの「DAX」、イギリスの「FTSE100」が売り買いできるとあって、近年取引所CFDは金融デリバティブの中でも隆盛を極めています。

特にダウは凄いですよね!
こんなに右肩上がりの立派なチャートを描く投資商品はなかなかないんじゃないでしょうか!?

しかも配当が付くことや為替の差損益を気にせず取引ができる点は非常にありがたいです。
せっかく海外の株価指数で利益が出ても、為替が変動してしまうと結果マイナス、なんてこともありますからね。

しかし、この人気商品にも徐々に暗雲が立ち込めてきました。
いや、むしろ人気だからこその弊害でしょうか!?

その一つとして直近、恐るべき制度変更があります。
しかも来週から本格的にスタート。

これを知らなかったら、いつの間にか「ポジションが強制決済されている」
なーんてことが、あり得るかも…!?

くりっく株365のザックリ概要

くりっく株365とは東京金融取引所で取引されている「株価証拠金取引」の愛称です。
投資をされている方ならこういうマークを見たことがあるのではないでしょうか?

そう、これです。

為替のレートを気にすることなく海外の株価指数も取引することができ、
決済期限もなくほぼ24時間取引が行えます。(日経225・NYダウは8:30〜翌6:00、DAXは16:00〜翌6:00、FTSE100は17:00〜翌6:00)

株のように配当がもらえたり(DAXは除く)、FXのように高レバレッジが効くという魅力もあります。

一例ですが、1年で1枚あたり5万円以上も…!!

取引単位は株価指数の数値×100が1枚なので、
損益としては指数の価格が1円動くと×100の100円損益が出ると考えると分かりやすいでしょう。
為替レートが関係ないので”ポイント制”みたいなイメージですね。

名前の似ている「くりっく365」は同じく東京金融取引所が扱っている「取引所FX」なので、また別の商品となります。

各国指数のチャート

ここで各指数のチャートを見てみましょう。

日経225

 

NYダウ

 

DAX

 

FTSE100

波打つ上下はあるものの、
一様に右肩上がりに推移していることがわかります。
世界の株価指数がどんどんと過去最高値を更新している現在の世界経済を
如実に表していますね。

昨年2017年にあった事件と制度変更

買いならば配当も付くし、長期上昇の続いてる株価指数でもあるし、ということで
投資家としては買って長期保有しておこうと思える銘柄でしたが、
その商品特性上、原資産である各国の”本当の”株価指数よりも人気が先行し、
価格が原資産と大きく乖離してしまうこともしばしばでした。
(くりっく株365は東京金融取引所が扱っている一商品ですので、現地の現物の価格とはイコールではないのです)

…それがバブルのように弾けたのが、魔の2017年の11月9日

この日はそれまで続いた世界同時株高に調整が入るかのように日経平均が前場急騰、後場急落という稀に見る慌ただしい値動きとなったのですが、
それに連動したかのように、くりっく株365の価格も日本時間から大暴落

特に凄かったのは前日終値の原資産と約1400ドルもかけ離れて高騰していたNYダウ。
本場のダウがその日の夜、前日比で101ドルしか下げなかったにも関わらず、
くりっく株365のNYダウは1日で約1500ドルも暴落する結果となりました。

それまで1日の値動きは100ドルとか大きくても4〜500ドルとかだったのに、ですよ。

チャートを見ると一目瞭然です。


原資産のチャートは「どこ?どれ?」といった感じですが、
くりっく株365のチャートは「一体何が起きたの!?」という印象です。

僕もこの日は肝を冷やす思いをしたことを覚えています。

そんな事件を受けてか
昨年11/22東京金融取引所のHPにひっそりと掲載された制度変更がこちら。
https://www.tfx.co.jp/newsfile/article/20171122-01

難しい言葉ばかりなのでザックリ要約すると、
「2017年12月18日以降は海外の株価指数を取引する時に、金利分もしっかり受払いしてもらいますよ」ということ。

それまでは、

・価格の高騰による「買い」注文ばかりが入るポジションの偏り
・一度保有したらなかなか売らない売買の不均衡
・原資産との価格乖離が大きくふとしたきっかけで起きる暴落

といった事態が問題視されており、
かつそれまではマーケットメイカー(値段を提示する複数の証券会社)が金利分を負担していましたが、そのせいで価格の急変時には売りと買いのスプレッドを広げざるを得ないという状況が発生していたんですね。

(過去最高値を連日のように更新していくNYダウは投資家の「買い」ポジションばかりが集まるわけですから、マーケットメイカーが払う金利額というのは相当なものだったでしょう。)

それらを是正する為に、今後”買う”人は1日毎に金利を個人で支払ってもらいます、と。
(「配当」は買い方がもらい、売り方が払う
「金利」は買い方が払い、売り方がもらう)

それにより売値と買値のスプレッドを出来るだけ狭めたり、原資産価格に近づけたりを狙って。
(ただ、今でもスプレッドは広く価格乖離もよく起こりますが 笑)

ここで一つ注意してもらいたいこととして、
どうしても配当がもらえる、という買い方のメリットばかりに目が行ってしまいがちですが、かつては金利受払いが少額ながらきちんと行われていたんですよ。

しかし日本が異次元の金融緩和であるマイナス金利を施行してから、下の図のように2016年3月以降は買っても金利は取られず、売っても金利はもらえずの状況が続いておったのです。

(ちなみにNYダウは2016年6月にくりっく株365に上場されたので、最初から金利は0でした)

この2017年冬の制度変更により、金利は日本円ではなく「外貨金利」が適用され、
あまり取引量の多くはないDAXやFTSE100は金利受払い額は当初1日数円程度といった金額でしたが、
特に買い玉数の多いNYダウは当初の発表で約102円/日、今ではさらに原資産の価格が上がったので、1日あたり170〜180円を買い方が支払うことになっております。

その結果、下図のように

2017年12月・2018年1月は配当相当額より金利相当額が上回る、という今までにない結果となってしまいました。(月によってバラツキはあるでしょうが)
仮に1日180円の金利支払いで買い1枚を1年間保有したら、
180×365=65,700

マイナス65,700円。

今までのような「長期上昇に合わせた長期買いポジション保有で配当狙い」という時代はここで終わりを告げました。

☆new☆2018/01/29からの制度変更

そしていよいよ、
この記事を書くきっかけとなったこの度の制度変更がこちら!

https://www.tfx.co.jp/newsfile/article/20180126-01

上記が掲載されたのがつい最近の1/26でしたが、
あまりにも急すぎるため猶予期間を設けたのか、
1/31には下記のように価格が段階的引き上げに変更されました。

つまりは
取引に必要な証拠金が今までの倍以上になる!
ということです。

この金額は取引のレバレッジを25倍に収めるよう計算された数値、とのこと。
(例ですが、仮にNYダウが26000ドルとして、その100倍が1枚となるので26,000×100=2,600,000。 2,600,000÷25=104,000 といったような計算です。)

これにより、何が問題かと言うと

新規購入者が
「今まで日経平均やNYダウを1枚あたり4万ぐらいで気軽に始められたのに…」

ということではなく、

既にポジションを持っている人こそが
「お金足りるの…!?」

と気を付けなければならないのです…!!

そもそも証拠金というのは、現物を保有しない「差金決済」において
取引により損失が生じた場合でも決済ができるよう一定額の金銭を預けてその中で取引をするといった、言わば「担保金」のようなものです。
これの金額が仮に10万円としたら、証拠金を計算する基準額は10万円になり、
それでその商品1枚を売り買いできる、ということです。

ですが、価格は常に変動するので、決済しておらずとも利益が膨らめばその10万円は計算上20万円にもなるし、損が出れば5万円になることもあります。

例えば上記のように証拠金預託額で10万円、評価損益でマイナス5万円が出ているとしましょう。
その場合は評価損益の5万円を差し引いた残りの5万円が現在口座で有するお金“有効証拠金額”となり、元必要だった10万円(必要証拠金額)との割合を見ると「50%」、つまりこれがよく取引画面で見る「有効比率」というものにあたります。

(漢字がなにやら類似していて難しいですが、語頭の”必要”だとか”有効”だとかを考えると分かりやすいですね)

そしてこの「有効比率」はとても大切でして、
証券会社や取扱業者にもよりけりですが、この比率が100%を下回ると追証(追加入金)が必要になったり、100%や75%や50%を下回ると即決済、つまり「強制ロスカット」されたりするという事態が発生してしまうのです…!!

これが証拠金取引において
“資金を厚めに入れる”
“資産いっぱいで取引をしない”
ということの由縁なんですね。

 

そして今回のように
証拠金基準額が大幅に引き上がるということは、

仮にAさんとBさんCさんという方がいて
3人とも以前の証拠金基準額でNYダウを1枚買っていたとします。
その時必要だった金額は1枚あたり2万円だったとしましょう。(昨年は本当にこんなもんでした。)

Aさんは口座に20万円、Bさんは10万円、Cさんは2万円を入れていたとします。
すると初期の有効比率はAさんが1000%、Bさんが500%、Cさんが100%となります。

(有効比率が100%を下回ったら強制ロスカット、という会社だったら
少しでも価格が下がり含み損が出たらその瞬間Cさんは強制ロスカットされてしまうので論外ですが)この中で損益を出しつつ、日々この数字は変化していくのです。

価格変化は何が起こるか分かりませんから、Cさんが仮に3万円を入れていたとしても−1万円以上の損を出せば有効比率はすぐ100%を下回ってしまいます。

しかし!しかしですよ。

単なる”値動きによる損”の方ではなく、
今回のように証拠金基準額である「必要証拠金額」が一方的に跳ね上がるとどうなるか??

仮に買ってから今まで値動きがなく、保有ポジションによる損も得もしていない状態だったと思ってください。
(売値と買値のスプレッドによる損益は、話がややこしくなるので一旦無視しましょう)

それが今度の2/19からのように、NYダウ1枚あたり106,000円の証拠金額になったら…

あれだけ1枚に対して余裕資金を入れていたBさんですら有効比率が100%を下回り、
強制ロスカットの対象となってしまうのです!!
取引で損を出していないにもかかわらず…!(仮に多少のプラスを出していたとしても)

さらに1枚だけ、というより複数枚持ってる方が大半ですよね。
10枚持っていたらそれに必要な証拠金額は比例して10倍になりますから、
10枚でも今まで最低数十万円あれば良かったものが、急に100ま………

恐ろしい話です。

知らない内にこれが行われていたら…
と思うとゾッとしますよね。

現行は日経225が46,870円、NYダウが44,600円。
既に今までと比べかなり高くなってはいますが、それが今後は96,000円と106,000円に。

東京金融取引所のHPには”緊急措置として”との記載がありますが、
それがいつまでかは明確になっておりません。
公式に記載があるのは”当面の間”という文字だけですからね。

もし、今の株価指数の価格が今後もどんどん上がっていくとしたら…??

今後の可能性

もちろん買いで持っていれば、今後価格が上がることによって値上がり益も入ってきますし、証拠金の金額なんて気にすることがなくなるかもしれません。

しかし、制度変更前にポジションを一旦閉じる、つまり利益確定の「売り」が多数出てくるかもしれませんし、
制度変更に際して無自覚な大量のロスカット注文が約定され、
そのロスカット注文は「売り」の決済注文となって市場に現れます。
(ほとんどの投資家は「買い」で持っていますからね)
その瞬間価格がガクッと下がることも可能性としては、無いとは言い切れません。

我々は来週に向けて
【追加資金を多めに口座に入れるか】
もしくは【今保有しているポジションを決済するか】
それとも【静観を貫くか】の岐路に立たされていると言って良いでしょう。

今回の証拠金基準額引き上げによって、くりっく株365は投資商品としては少し敷居が高くなり、少額投資家にとっては手を出しづらい商品となってしまいます。

またこの情報自体を知らないで今まで通りポジションを保有している方もたくさんいるでしょう。

投資情報を共有している仲間がいる、
もしくは
取引所のHPを毎日欠かさずチェックしているような勤勉な投資家の方でなければ、
こういうお知らせがあったとしてもなかなか気付くことはできません。

当然ながら投資商品には一長一短がありますし、
全てのニーズに応えられる銘柄なんてものもありません。

そこはやはり投資家一人一人が自分の頭で考え判断し、何をトレードするかは最良の選択を自ら行っていくしかないのでしょう。

 

ただそれは逆に、
今回のこの情報、この制度変更をどのように捉え、日々のトレードに有利に活かすかはみなさん次第、ということでもあるのです。

度重なる制度変更は、それだけ世界の景気好調を物語っていますし、同時にそれが過熱・加速状態にあるということを示している、とも取れます。

くりっく株365をおやりになってる方は特にこういった情報に、今後も注視していきましょう。

また何かあったらお知らせできればと思います!

御一読くださりありがとうございました。

 

インベスター俳優 廣瀬瞬

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